一新塾講義録(2005年11月9日19:30〜21:30)

「イベント力を身につけろ!
      〜地域を変える、社会が変わる」

     平野暁臣
(空間メディアプロデューサー)

平野暁臣氏は昨年初めて一新塾での講師をお引き受けくださいました。
今年は2回目の講義となります。11月6日に入塾した17期生にとっては初の一新塾セミナールームでの講義の場となりました。

【 講義の内容 】

■イベントの5つの宿命
■ イベントのクオリティを決める4つの技術
■ イベントの構造

■プロデューサーの仕事とは?

イベントは1回限りの特別な出来事ですが、多くの場合、つくり手の組織もまた“仮設”です。イベントにとってこれは宿命ともいうべきもので、プロ デューサーはその都度はじめてのチームを率いてプロジェクトに立ち向かわなければなりません。

多くのクリエイティブな人材をひとつのチームに束ねるわけですが、残念ながら、そうしたソフトで緩やかな組織体を統御するための普遍的な管理理論や統制原理はありません。にもかかわらず、クリエイティブスタッフのキャスティングとそのスーパーヴァイズはプロデューサーのもっとも重要な仕事のひとつな のです。

ではお前はどうやっているんだと訊かれても、うまく答えられない。ただ、ぼくはチームを編成した時には徹底して話をします。そのプロジェクトで獲得したいことはなにか、どんな空気を生み出したいのか、最後まで守るべきものはなにか・・・。プロジェクトの哲学に共感してもらうことから始めています。
クリエイターのモチベーションを高めるにはそれしかないし、そもそも志の部分で共感できない仕事に優れたクリエイターは参加してくれません。

仕事の規模が大きくなるほど、参画するプロフェッショナルの数と種類は増えていきます。プロデューサーとは指揮者のようなもので、さまざまな楽器の奏 者を束ねてひとつの音楽につくりあげていく立場です。目指すべき方向とイメージを皆に指し示し、そうなるようにそれぞれを調整していく。そのとき必要な のは、いうまでもなく指揮者と奏者との信頼関係です。互いの技術力に対するリスペクトの感情と言い換えてもいい。「彼の仕事は面白い」「彼と仕事がしたい」という感覚ですね。これこそがクリエイター相互をつなぐ唯一の行動原理なのかもしれません。

プロデューサーの仕事を一言でいえば「バランスを取ること」。「実施意図と観客の期待」、「内容とコスト」、「コストと効果」・・・・。バランスのと れた判断をキープし続けられるかどうかで成否が決まります。そのためには常に自分自身を俯瞰する態度が必要で、熱中して突き進む自分を醒めた眼で冷静に 見つめるもうひとりの自分が要る。考えてみると、プロデューサーはジギルとハイドのようなものです。表現者とマネージャーが同居しているし、あるときは 参謀だけど、あるときは軍曹になる。そこが面白いんですね。


■質疑応答 (多くの質問の中の一つをご紹介します)

質問 『個性の違うメンバーをプロデュースする秘訣は?』

イベントを共に行う仲間のいいところや得意なところとか美意識、好みなどは結局一緒に仕事をしてみなければわかりません。
クリエイティブな人たちで行う束ねたチームがうまくいくかは、たった一つの原理しかないです。互いにリスペクトしているかどうか、だけです。

そして、彼らにとっては、プロデューサーに求めるものは、面白いかどうか、クリエイティブなもの、新しいものをつくる環境をつくってくれる人間かどうかがすべてなんです。

しかし、そうやって一緒に仕事をしてイベントの成功体験をしたメンバーでいつもやればいいかといえば、そこには落とし穴があります。いつの間にか過去の成功体験をトレースするようになってしまいます。生み出すものが形式化、様式化してゆきます。そうすると一番大切なものを失ってしまうんです。新しいものを生み出すという、、。

構造的に矛盾していますが、ふせぎようのないことです。
だから、新しい血を入れるという、ことをしなくてはならない、無理してでも。
全員「初めまして」だと品質を保証できないので、3分の1以下で新しい血を入れます。基本的には信頼関係があり、お互いがリスペクトしあっている方と創ってゆきます。

彼はどんな才能があり、どんな力があるか、は一緒にやってみなければわかりません。一回でもやれば、かなりのことがわかります。


■一新塾生のみなさんへメッセージ

この一新塾自体が、皆さんにとってイベントなんですよね。受け手でもあり送り手でもあると。複雑かつ恵まれた状況の中でこの一新塾というイベントをこれから皆さん過ごされるわけです。この体験は、必ず将来役に立つと思いますし、一新塾での営みをしてゆく時にもイベント的な視点や、イベント型の方法を意識の中に持っていただいて、自分は”仕掛ける側”なんだと。仕掛けるためには何をしたらよいのか、と常に自覚をしてもらって仕掛ける側の視点で物事を見て欲しいと。お客さんではなくて。
期待しています。がんばってください。


平野暁臣氏
平野 暁臣 (ひらの あきおみ)
     (空間メディアプロデューサー)
 
  (株)現代芸術研究所代表取締役
 


《略 歴》
  
1959年東京生まれ。1984年横浜国立大学大学院修了。
建設会社を経て、86年に岡本太郎が創設した現代芸術研究所へ。

1989年から1993年まで横浜国立大学大学院講師をつとめる。  

イベントやミュージアムなど、空間メディアの領域で多彩な プロデュース活動を行う。
  
世界祝祭博覧会(94年・三重)、世界・炎の博覧会(96年・佐賀) など数々の地方博をはじめ、国際レジャー博(88年オーストラリア)、 セビリア万博(92年スペイン)、ジェノバ国際博(92年イタリア)、 大田国際博(93年韓国)など国際博覧会の日本館をプロデュース。

最近では、リスボン国際博覧会日本館の総合プロデューサー(98年 ポルトガル)、川崎市岡本太郎美術館の展示空間デザイン(99年神 奈川)、六本木ヒルズアリーナのエグゼクティブプロデューサー (02〜04年東京)などを務める。

この他、イベントの世界では我が国唯一の有資格者による職能団体 『日本イベント業務管理者協会』の会長としてイベント従事者の職能 確立にも取り組んでいる。

89年〜93年:横浜国立大学大学院講師
03年〜:(社)日本イベント産業振興協会アドバイザー

<近書>_________

『コトづくりの眼
―イベントを読み解く48の着想―』 
           (日本実務出版)

『仕事がうまくいく人の「仕掛ける」技術』
           (青春出版社)
『EVENT PLANNING HANDBOOK
           (日本実務出版)

『イベントの底力』(日経BP社)

共著、 『体感美術館』(リコシュ )

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