一新塾ニュース
5月10日号(第2号)

【第2回テーマ】 「サッカー界に見る日本の構造変換」

 先日、一新塾第7期で配布する政策ハンドブック作成の合宿でのこと。

 小渕前首相の経済戦略会議の答申と大前塾長のこれまでの主張とがまとめられたシートを見ながら議論していた。その論点のひとつに「少子化対策としての外国人移民受入れ+国籍法」という項目があった。高失業時代の現在、連合をはじめとして雇用確保を前提に反対意見は多いと思われる。

 しかしIT関連の技術者やそれに伴う弁護士など絶対数が足りないと言われる一方で、3Kと呼ばれる劣悪な労働も人が集まらずに業界組合が海外研修生受け入れという抜け道で成立っている。卵が経済の優等生などと呼ばれているが、養鶏業界などはこの典型でワンパック100円の特売は外国人研修生の低賃金のおかげである。

 この問題を僕はサッカー界に当てはめて考えてみた。

 フランスワールドカップにおいて自国開催で初優勝したフランス代表チームには、MVPのジダンを始め何人もの移民選手がいた。日本で言うなら在日朝鮮人選手が朝鮮系日本人として出場し活躍し、優勝の原動力となったわけだ。また日本と対戦したジャマイカ代表チームは、両親の一方がジャマイカ出身ならば帰化を認めるとし、ヨーロッパに移り住んだ二世選手を積極的に受け入れ強化した。日系ブラジル人のうまい選手を日本に帰化させて強化するようなものである。実は日本のアイスホッケーチームが長野の時にやった手でもある。

 日本もロペス選手が帰化し最終予選の途中から出場し活躍したが、彼は10年近く日本でプレーし日本人と結婚してから帰化しており、国として積極的に受け入れたとは言いがたい。ラモスや高見山、小錦、曙、武蔵丸も長年活躍し身元が明らかだから帰化できたというところだろう。
 
 しかしスポーツ界の出来事を単なる競技の強化策として捉えるだけで良いのだろうか。Jリーグのスタート時、ラモスほどのプロ精神をどれだけの選手が持っていたか。ジーコの果たしたサッカー伝道師としての役割の大きさはいかがか。

 日本の社会構造に照らして考えてみると仮にIT技術をもった優秀な外国人を日本の学士、修士、博士を条件に受け入れることで構造変換し、少子高齢化に対応しようという政策は、ラモスやロペスが帰化しオフトやジーコの指導によって強化された世界でもまれている日本のサッカー界をモデルにしても面白いのではと感じた。

一新塾第5期OB 室橋正伸