2010/06
/07 【一新塾ニュース】第418号:
塾生活動レポート
『“農山漁村”と“都市の商店街”の橋渡しになる!』

☆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓☆
          一新塾ニュース〜今のニッポンを変えろ!〜
          【 第418号 】 発行日:2010年6月7日
☆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓☆

■ 塾生活動レポート

     『 “農山漁村”と“都市の商店街”の橋渡しになる! 』
     〜天下の台所と言われた大阪から全国の方へ伝えたい〜

               一新塾第24期「大阪」地域科  森本 栄美

==========================================================

 メルマガ読者の皆さま、こんにちは。一新塾の森嶋です。
今回は、このたび一新塾第24期を卒塾される「大阪」地域科の森本栄美さん
のメッセージをお届けいたします。森本さんは、4月に「えみこころ」を起業。
“農山漁村の加工品”を“都市の商店街”で出張販売する活動を開始されました。
先日5月25日の『日本農業新聞』でも、森本さんの奮闘が紹介されました。
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/bulletin1/article.php?storyid=2826

そして、6月9日(水)から11日(金)まで大阪市東住吉区の「駒川商店街」
での出張販売が決まったそうです!
「駒川商店街」は、ちょうど1年前、森本さんが最初に視察に訪れ、
プロジェクトを立ち上げるきっかけとなった商店街でもあります。

■■■■■□─────────────────────────
■■■■ 塾生活動レポート
■■■
■■     『“農山漁村”と“都市の商店街”の橋渡しになる! 』
■■    〜天下の台所と言われた大阪から全国の方へ伝えたい〜
■■■
■■■■                 一新塾第24期「大阪」地域科
■■■■■□                         森本 栄美

 集落の核である総合商店の相次ぐ廃業、生産加工者である農山漁村の方たち
が、売り先がなく困っている現状、また、まちの公営住宅に住む高齢者が、
中小の小売店やスーパーの閉店により、買い物に不自由している現状。消費
活動や流通の郊外化が進むなか、孤立していく農山漁村と都市高齢者。

 両方とも疲弊している現実を知り、お互いが支え合い、再生するための
橋渡し役ができればと、“農山漁村の加工品”を空き店舗が目立つ“都市の
商店街”で販売する活動を始めました。
 そして、今年35歳を迎える節目の4月に「えみこころ」を起業しました。
歩いて買い物ができる、都市の新しい「産直」、そして生活者起点の新しい
流通のカタチを築いていくために。

●これまでの人生

 小・中学時代に、共働きで家族団らんの時間が持てなかったこと、祖父母
の介護の手伝いができなかったこと、高校時代に優等生だった友人たちとの
ギャップに、いつしか強いコンプレックスを抱くようになっていました。
社会人になっても、「人からよく思われたい、負けたくない」という意識が
強く、他人の評価ばかりを気にして、転職を重ねていきました。最初に就職し
たのは、外資系の化学メーカー。次に、工務店で内装の現場監督、設計事務所
で内装デザイン、高校での情報実習助手、生協と様々な世界で学ばせていただ
きました。

 しかし、「本当に没頭できることを見つけ、今までの弱い自分を克服したい。
刺激し合える仲間がほしい」との思いが湧き上ってきました。そんなときに
一新塾を知りました。入塾してからは、日常生活のなかで楽しみ・喜びを見出
すこと、人の長所を探すのが好きだったので、この良い面を活かせないかと考
えていました。また、長い間建築業に携わっていたこともあり、まちづくりに
強い関心がありました。

●目覚めた自分

 一新塾に入って第1回目の定例会、大阪市東住吉区の駒川商店街の視察でした。
 小さい頃に行った商店街の活気がそこにはありました。商店主の威勢のいい
掛け声やお客さまとのやりとりを見て、こちらが温かい気持ちになり、スーパー
にはない、商店街ならではの人と人とのつながり、対面販売の魅力を再認識し
ました。

 また、勉強会のなかで、まちづくりの観点から地元のシャッター街以外にも
地方が抱える現状を知りました。特に、物流が途絶えたため業務用の冷蔵・
冷凍庫で食糧を備蓄せざるを得ず、プロパンガスも届かないので薪を使って
生活している集落があることは、私にとって大変衝撃的でした。「買い物」と
いうごく身近なテーマだからこそ、また対称的な活気のある現場を見たから
こそ、地方の痛みがよりリアルに感じられたのかもしれません。

●プロジェクトの立ち上げ

 買物客が商品を目で見て、商店主と対話をしながら、満足して買う。そんな
当たり前のことができない今の「買いもの」事情。「商店街が負の遺産では
ない!!」視察を終えて、商店街の良さを改めて感じた私たちは、
「日本の商店街を元気にする株式会社」プロジェクトを立ちあげました!

●商店街の現場に飛び込む!

 今までで商店街は50ヶ所以上、商店は100軒近く、地元大阪を中心に
兵庫・奈良・滋賀、そして東は横須賀まで足を運びました。商店街を中心に、
外部環境や行政が抱える問題、例えば財政難など根本原因を調べ、それぞれに
あった地域ビジョンを立てていき、各地でワークショップを行っていきました。

 そんななか、和歌山のかつらぎにある花園という集落で、片道2時間かけて
市場に仕入れに行き、集落に住む人たちの日常生活を支えて、がんばっている
商店主に出会い、心を打たれました。

 かたや、地方にあるシャッター街。最も驚いたのは、シャッターを閉めた店
がどこも困っているわけではないという事実でした。「ものを置いたら売れる
時代ならよかったが、このご時世、開けた方が赤字になるから」と。しかし、
商売をやっていたことのある人なら、きっとお客さまの喜ぶ顔が見たいはず!
商店街の空き店舗で出張販売をするのは、そういう諦めかけている商店主に
気付きをもたらしたい、という思いもあります。

●農業に関心を持った理由

 ターニングポイントは、視察を通して、「商店街が元気=生鮮食品店がある」
ことに気づき、八百屋そして農業に関心を持つようになったことでした。現場
に行ってお話を聞き、山間部では関東などの平野部とは違い、作付面積が小さ
く、大規模な生産はできないものの、そのぶん農産物一つひとつに対する愛情
が強いことを感じたのです。

 それにもかかわらず、JAの統廃合が進むなかで、地域に支所がなくなり、
取り残されていく集落、直売所のスーパー化、それに伴い増え続ける廃棄され
る野菜たち。ヒアリングを続けていくなかで、地域ぐるみで必死にがんばって
いる農産加工品に力を入れている生産者が増えてきていることを知りました。

●地方が元気になるお手伝いがしたい!!

 「食」は暮らしの原点。天下の台所と言われた大阪から全国の方へ伝えたい
思いがあります。「地方特産品」を軸に、地方の「売りたいもの」を都市の
「買いたいひと」へ届けたい。商店街を核として、地方のストーリーのある商品
に、ひとの温かなサービス(心)を込めて、都市での買い物をするひとに届けたい。
農山漁村のチャレンジする姿勢を支援し、地方で産業がおこり、元気になるための
お手伝いがしたいと。

 その思いが強くなったのは、宮津に仕入れ交渉に行ってからです。天橋立で
有名ですが、観光客が激減しており、人口が二万人を切るという深刻な状況。
そこで、水産業を元気にしようと、加工品に付加価値をつけ、都市の人に
買ってもらうことで、売上を上げ、若い人の雇用を生み出したいとの思いを
聞きました。なんと、異業種の工務店さんが、建築の知識を活かし、
「天橋干し」を開発。「まちのみんなの生活水準が上がり、新しい家を買って
くれるようになるのが夢だ」と語る姿を見て、一層刺激を受けたのです。

●生活者起点の流通のカタチを目指して

 生協で地域訪問をしていたとき、便利さを求める一方、運動がてらに、近所
の人と買い物をするのを楽しみにしている単身高齢者が多いことを感じていま
した。また、私自身も都市での生活に慣れ、車を運転しないこともあってか、
道の駅や大型商業施設など郊外型の買い物には、どこか違和感があったのです。

 そこで、歩ける範囲で拠点を設けるために、大阪市内の商店街の空き店舗の
ほか、近くの住宅の軒先・駐車場・集会場・福祉施設・企業・マンション・
公営住宅の敷地内などでも販売しようと、自転車で駆け回る毎日です。地域の
方たちに対面でサービスをするのは、対話を通して、コミュニケーションが
図れたり、ご用聞きや安否確認も兼ねられると思ったからです。
 また、出張販売をしているなかで、リピーターの方も増えてきました。
今後は、さらなる利便性のアップのために、会員制度やステーション(商品
の受け取り拠点)も考えています。
 さらに、商店街を利用されている方には、買い回り品と地方特産品をセット
にした定期的な宅配なども、商店主と協働して行う予定です。
 これらは、年明けに開設するアンテナショップと連携ができればと思います。

●私の人生のライフワーク

 「大阪の森本です!」初めて電話をしたり、会いに行ったりするときの第一声です。
 これからも、農山漁村や商店街、都市で暮らす生活者のなかに飛び込んで、
多くの人に出会い、活きた情報を届けていこうと強く思います。

 いつか私が子供を持ったとき、心に熱い思いを持って、一生懸命に働く姿に、
誇りを持ってもらえたら、さらには、次の世代を担う子供たちにも、この事業
を通して、地方で働ける環境を整えていけるよう、まずは自分ができること
から始めていく覚悟です。
 私たちが老いたときに、家族や友人との孤立で寂しい思いを抱えても、
若い人たちが近くにいて話ができれば、元気はきっと連鎖すると思うから。

 



一新塾ニュース「今のニッポンを変えろ!」メールマガジンのページに戻る