2010/08
/10 【一新塾ニュース】第421号:
塾生活動レポート
『コミュニティーキッチン <いぬゐの郷>』

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          一新塾ニュース〜今のニッポンを変えろ!〜
          【 第421号 】 発行日:2010年8月10日
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■ 塾生活動レポート
       『 コミュニティーキッチン <いぬゐの郷> 』
                     一新塾第25期 本科 笹淵恭子

■【参加者募集】「第27期説明会」2010年11月7日(日)開講
   大 阪:8月28日(土)13:30〜16:00
   名古屋:8月29日(日)13:30〜16:00
   東 京:9月 1日(水)19:30〜21:40
       9月 4日(土)15:00〜17:30 【定員になりました】
       9月 8日(水)19:30〜21:40
       9月11日(土)15:00〜17:30
   沖 縄:9月 3日(金)19:00〜20:30
   → http://www.isshinjuku.com/03bosu/b2_sietumei.html
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 メルマガ読者の皆さま、こんにちは。一新塾の森嶋です。
  今回は昨年11月に入塾、現役生として、チームプロジェクト活動に、講義に
奮闘中の第25期生の笹淵恭子さんのメッセージをお届けします。

 笹淵さんは、音楽学を専門として、日本の大学を卒業後、フランス政府給費
留学生としてパリに渡られ、2000年にわたる西洋音楽の構造的歴史の研究に
半生をついやされました。その後、ファッション関係の会社勤務(フランスと
日本の橋渡し役)、ご家族の介護、看病をへて、社会の役に立ちたいという
気持ちで、地域のボランティア活動に。「私の残りの人生の仕事は、私の住んで
いる地域再生にある」という強い思いで一新塾の門を叩いていただきました。
笹淵さんの 熱きメッセージをぜひ、ご一読ください。

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■■■■ 塾生活動レポート
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■■      『 コミュニティーキッチン <いぬゐの郷> 』
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 私は一新塾25期生として、「コミュニティーキッチン<いぬゐ郷>」(いぬゐ
とは北西部の和式名。千葉の旧幕張地区を中心とする地域名として付けた名前
です)の立ち上げを2月に宣言し、6月にプレオープン、7月から始動しました。
行動し、現場と対話しながら進もうと、先ず自宅を開放してスタート、小さな、
小さな一歩を踏み出したところです。

 プロジェクトの長期的目標は、千葉市の旧幕張地域を自立した地域(根っこ
を持った地域)として立ち上げること。そのためにはここに住む人々が国や行政
に頼ることなく、新しい協働体を作って、自分達の問題を自分達で解決していく
地域にしていくことです。

●私と地域の問題

 私と<地域>というテーマの結びつきは、私の半生をかけた西洋音楽の研究
を抜きにしては考えられないことでした。18世紀末の音楽社会学的変革に、
今の日本の社会の変革が学ぶべき点があるという非常に強い思いが、私にあり
ます。

●西洋音楽の18世紀末の変貌と日本における地域の変貌 

 西洋音楽には理論と実践という二項が歴史の始まりから存在しました。
というより、音楽といえばまず理論としての学問であり、実践(音のパフォー
マンス)はその下で派生的に生じる存在でしかありませんでした。こうした
二層構造の中で、宮廷や教会の言われるままに音楽をしていた、いわばお抱え
職人としての18世紀の音楽家が、市民社会の出現と共に、庇護者を失い、音楽
作品を売って生計を立てなければならなくなり、その結果、その人ならではの
オリジナルな芸術作品を作る自立した芸術家という存在が出現いたしました。

 この状況は、現在の日本で求められる地域の変貌に酷似しています。明治維新
で西洋の近代国家制度を取り入れて以来、地域は国から地方自治体へと降りて
くるピラミッド型の底辺にあり、上からお金を与えられ、指導を受ける存在
でしたが(これはまさに、18世紀の市民社会出現前の、お抱え職人的存在と
同じ)、今や国家の財政は破綻といってもいいような状況にあり、制度は硬直
化して動かなくなり、もはや、地域が自らの根っこの上に自らの力で立ち上が
るしかなくなりました。地方分権、地域主権といった政治の言葉も、この歴史
的転換から出るべくして出てくる言葉と私には思われます。

●私が住んでいる旧幕張地域の自立のために

 地域が自立するためには、新しい協働体を作らなければなりません。なぜ、
<新しい>のでしょうか? 旧来の人の繋がりがあらゆる場所で崩壊し、
個人がバラバラの状態で放り出されて、いわゆる無縁社会が出現しています。
ここでは、もはや強い意思を持って人の繋がりを意識的に新しく創り出して
ゆくことによってしか、人は生きられなくなりました。これは今まで日本の
歴史になかった状況です。

●コミュニティーキッチン「いぬゐ郷」
 
 私はこの新しい協働体つくりを、現在乱れている食の問題から始めます。
人の繋がりがなくなった今、一人で食事をとる孤食が増えました。また、家庭
で調理せずにコンビ二弁当や出来合いのものを買って食べることが、ごく普通
のこととなっています。これでは、栄養のバランスはとれず、添加物の多い
食事をとる結果となって、健全な心と健康な体を維持することは到底出来ませ
ん。当然のごとく、アレルギーの子どもは増え、得体の知れない病気に悩まさ
れる人が多くなりました。又、鬱病、自殺も食事と全く無関係とは言えません。

 キッチン「いぬゐ郷」では、自分が望む時には、人と一緒に楽しく食事が
出来ること、栄養のバランスが取れた食事がとれること、栄養価を高く保つ
調理法(低温蒸し)等に留意しています。

 バランスのとれた食事として、一食の中ですべての必要な栄養分が取れる
<いぬゐカレー>を定着させようと試みています。明治時代に外国から入って
きたカレーが、日本人の食として定着した今、スパイスの集合体としてのカレー粉
をいぬゐ郷の畑で生産し、日本全国に、また世界に発信したいと思っています。
カレーの自立(!)です。

 また「いぬゐ郷」の重要な調理法として、低温蒸しの方法を取り入れます。
60℃〜80℃で食材を処理することによって、栄養価を増し、素材の自然な味を
損なわずに調理することが出来ます。

●協働体作りをどのように?

  こうした食事の提供と共に、集まった人、一人一人が持っている生きる知恵
を共有し、一人だけでは得られない知恵を分かち合う場をオーガナイズしたい
と思います。そして誰もが主人公になれる場作りをし、それぞれの人が生きる
楽しさ、意味をもてるようにしていきたいと思います。一つの例として、80歳
の料理上手な高齢者に料理を教えてもらっています。ここでは料理に限らず、
いろいろな知恵を話してもらうことによって、教えてもらう人は生活が豊かに
なり、一方この高齢者は自分が役に立てることに大きな喜びを感じ、その喜び
が教えてもらう方にも伝わってきます。

●<いぬゐ>とは?

 そして、このキッチンには必ず音楽のライブがあり、皆で歌って笑って、
大変楽しい雰囲気が作り出されています。集まりには歌が大きな効果を出す
ことがわかってきました。フランス語にINOUI(まさにいぬゐと発音します)と
いう言葉があって、この中にoui(聴覚)という音節が入っています。北西部の
和式名として<いぬゐ>と名付けただけですが、私と地域の同志が音楽畑出身
であること、そして私は音楽の研究のためフランスに長く滞在したことを考え
ると、不思議なつながりを感じます。そして、いぬゐという言葉は、フランス
語で<前代未聞>という意味ですが、この言葉の通り、前代未聞な地域、
オリジナルな地域となるよう願っています。

 そして私個人にとって、このプロジェクトの大きな意味は、音楽においては
理論家であった私が、地域作りでは現場の実践家(プレイヤー)に転換した
ことです。プレイヤーとして、今後食のみならず、他のさまざまな問題に順次
取り組んでいくつもりです。

 


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