2011/4
/18 【一新塾ニュース】第448
塾生活動レポート『 小児がん医療の未来は社会の中に』 


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        一新塾ニュース〜今のニッポンを変えろ!〜
          【 第448号 】 発行日:2011年4月18日

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■ 塾生活動レポート

        『 小児がん医療の未来は社会の中に 』
         〜つたえる-つながる-ひろげる〜
                          一新塾第18期本科 牧本 敦

■【参加者募集】「第28期説明会」2011年5月29日(日)開講

(参加予約)→ http://www.isshinjuku.com/03bosu/b2_sietumei.html

●東 京:4月20日(水)19:30〜21:40
      4月27日(水)19:30〜21:40
      5月 7日(土)15:00〜17:30
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●大 阪:4月23日(土)13:30〜16:00
●名古屋:4月24日(日)13:30〜16:00
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●沖 縄:4月23日(土)19:00〜21:00

※東日本大震災義援金として第28期の入塾金の10%を寄付させていただきます。

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 メルマガ読者の皆さま、こんにちは。一新塾の森嶋です。

本日は小児がんと闘う医師 牧本敦さんの活動レポートをお届けします。
牧本さんは、子どもの頃、中等症の気管支喘息を患い「子ども」と「病人」
という二重の社会的弱者の立場を経験した者として、そのような子どもを
助ける職業に就きたいと願って小児科医となったそうです。その後、子ども
の病気の中で最も死亡率の高い「小児がん」を専門とする医師になりました。

日本のがん医療のメッカである、国立がんセンター中央病院で奮闘されて
いる牧本さんは、2006年5月、一新塾第18期の門を叩き、同志との切磋琢磨を
経てNPO法人SUCCESSを設立されました。牧本さんは入塾当時の動機を
"「医療人」が「医療人として」頑張っている限り、真に良い医療は出来ない"
"何らかの形で「一般社会」の中で生き直さなければならない、と強く感じた"
と語られています。

専門医師として、一市民として、社会全体で小児がんを克服しようとする試み
にますます邁進されている牧本さんのメッセージです。

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■■■■ 塾生活動レポート
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■■        『 小児がん医療の未来は社会の中に 』
■■          〜つたえる-つながる-ひろげる〜
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■■■     NPO法人小児がん治療開発サポート(SUCCESS)事務局長
■■■■                            一新塾第18期本科
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●6000人を超える市民が集まる

  2010年夏、東京お台場のお台場合衆国2010に、4日間でのべ6000人を超える
市民の方々が集まって下さいました。「レモネードハウス123」と名付けられた
小児がん患者のためのイベントです。小児がんの一種、神経芽腫のために短い
人生を閉じたアレクサンドラ・スコットちゃんの「レモネードスタンド」、
全米のレモネード売り上げと寄付金は年間10億円に上り、小児がんの治療の
開発研究のために使われています。同じような活動を日本でも行いたい、という
ロンドンブーツ淳さんの声かけで行われました。この活動で集められた総額は
1,213,439円、その全額が我がNPO法人小児がん治療開発サポート(SUCCESS)に
寄付され、小児がんの治療開発支援のために役立てられています。

●SUCCESS設立

 NPO法人SUCCESSは、私が一新塾を卒塾後の2007年7月に、国立成育医療研究
センター名誉総長の泰順一先生(現:NPO法人SUCCESS理事長)の御理解と御協力
を得て設立しました(設立までの詳細については、一新塾ニュース第311号
[2007年10月25日]を参照下さい)。
http://www.isshinjuku.com/04i_hassin/merumaga/kn_071025.html

 我々は、「つたえる」、「ささえる」、「治療をつくる」という活動の三本
柱を掲げて小児がんと闘い、小児がん医療問題に対して包括的な解決手段を
講じています。

(1)「小児がん」との闘いの担い手となる一般社会への啓蒙(つたえる)
(2) 治療行為の受け手である患者さんへの情報提供の充実と具体的支援(ささえる)
(3) 武器(治療手段)の開発の支援(治療をつくる)

●「治療をつくる」

 上記(3)の「治療をつくる」活動は、NPO法人SUCCESSの最も大きな使命です。
資本主義市場原理では、小児がん患者というマイノリティへの薬剤開発は、
コストに見合うだけの利潤を産み出す事ができないため、製薬会社が敬遠して
しまうのです。日本の薬事行政の硬直性に起因する「ドラッグラグ」の問題は、
このような分野では極めて深刻です。米国では、国立がん研究所(NCI)が年間
200億円にも上る研究予算を小児がんのために投じ、小児がん専門医師や研究者
の力でそれを補うような仕組みが確立していますが、研究予算だけをみても、
日本はその50分の1にも満たない規模しかありません。

 また、一方では小児科や産科を中心とする医師不足という背景があり、現場
の多忙さと医師の疲弊から「医療崩壊」という社会現象を引き起こしています。
このような中で、医師の中でも極めてマイノリティである小児がん専門医師は、
目の前の患者さんへの対応に追われ、複雑な行政問題であるドラッグラグや、
不足する研究予算に対して問題意識を持つ余裕すらないのが現状です。

 このような現状に鑑み、我々は、小児がんの治療開発を推進するために、
小児がんの専門医師や研究者と協働し、少ない現場の負担で新しい治療の臨床
試験が進むような仕組みとして「SUCCESS治療開発支援センター」を設立しまし
た。ここでは、臨床試験の計画や薬剤の保険適応拡大戦略の策定、臨床試験の
症例管理やデータ管理、また、試験実施施設でのデータ収集の支援など、通常
の治療開発では製薬企業が莫大な予算をかけて行う業務を、比較的安価に行う
事が出来ると同時に、公的研究費からの委託業務として請け負える体制を整え
ています。

●「つたえる」「ささえる」

 しかしながら、上述のように日本の研究予算には限りがありますので、この
ような体制を維持し、発展させるためには、小児がん医療の改善そのものを
「社会の一大課題」として認識し、社会の中からリソースを集中させる必要が
あります。その目的において、NPO法人SUCCESSは、年2回の定期的な一般向け
講演会を行うと同時に、地域イベントでのレモネード販売などを通じた啓発活
動(「つたえる」活動)を行ってきました。また、インターネット上で小児
がんの医療情報を提供するため、米国の権威あるウェブサイト「CureSearch」
と提携して日本語サイトを開設するとともに、患者さんや家族から個別の医療
相談を受ける体制「SUCCESS医療相談」を整え、患者支援活動(「ささえる」
活動)を展開しています。

●「つなげ」「ひろげる」

 このような数々の活動が、冒頭の「レモネードハウス123」との協働と寄付
につながり、各地でのレモネード活動につながり、さらには、様々なNPO法人
や社会活動家の方々との協働へと広がっている事を実感しています。その意味
で、NPO法人SUCCESSの活動の三本柱「つたえる-ささえる-治療をつくる」から
始まり、それを「つなげ」「ひろげる」事によって、社会の中で小児がん医療
の問題を考え、解決に向けた積極的な行動を起こすための基盤が少しずつ固まっ
てきたように思います。

●行政の表舞台に立つ

 2011年1月、厚生労働省がん対策推進協議会の中に「小児がん専門委員会」が
組織されました。そこでは、小児がん医療の問題を多方面から拾い上げ、解決
策を検討し、2012年に改訂される「がん対策推進基本計画」へ反映させること
を目的としています。私も委員に選任され、ここに、専門医師と社会活動家の
二足のわらじを履いた変わり者が、行政の表舞台に立つことになりました。
今後の私自身、そして、NPO法人SUCCESSの活動に、どうかご注目下さい。
そして、心ある同志の方々、小児がん医療の未来のために、一緒に活動しよう
ではありませんか。

 *NPO法人小児がん治療開発サポート(SUCCESS)のホームページ
   http://www.nposuccess.jp/

*小児がんと闘う牧本敦医師のブログ
   http://pedicancer.at.webry.info/

*厚生労働省ホームページ:がん対策推進協議会・小児がん専門委員会
   http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcb.html#shingi3




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