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      一新塾ニュース〜今のニッポンを変えろ!
     【第184号】 発行日:2005年5月2日

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▼目次
■『日本における外国人就労者の子弟の教育問題
      教育は子どもの基本的人権』井口正富氏(第14期生)

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皆さま、こんにちは。事務局の森嶋です。
ゴールデン・ウィークいかがお過ごしでしょうか?
今回は、第14期の井口正富さんに『日本における外国人就労者子弟
の教育問題』 をテーマにご投稿いただきました。 井口さんは
「多文化共生チーム」のリーダーとして、在住外国人が抱える
諸問題の解決に向け、以下の活動を展開しています。

(1)外国人問題に関するPRを行う活動
(2)全国の外国人集住自治体について、その実態調査ならびに報告

また、一新塾講義にて、上田埼玉県知事や松沢神奈川県知事に
対して提言したり、 外国人が急増する自治体の市民活動団体に
招かれ共に活動をしたりしています。

ご投稿いただいた原稿は、井口さんが取材を受けた日系外国人向け
雑誌社より、近々ポルトガル語、スペイン語に翻訳されて掲載され
るそうです。

一新塾生の活動レポート□■□■■■ □□■□
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日本における外国人就労者の子弟の教育問題
        「教育は子どもの基本的人権」


■■■□□■□■ ■■■□ 第14期政策提言コース井口 正富


現在、日本には約200万人の外国人が居住しています。
そして、その数は  将来さらに増える見通しです。一方、これら
居住外国人、とくにいわゆる
単純労働の分野で働く人やその家族は、
日常生活において様々な問題を抱
えています。

そして、それらは入国管理、労働、教育、医療その他多岐の分野
にわたっています。そんななか、私は今すぐ真剣に取組まなければ
ならないのは、外国人の子どもたちの教育問題だと考えています。

では、 外国人の子どもたちは教育面でどのような問題を抱え、
その解決に向けて私たちはいかなる取組みをしなければならない
のでしょうか。

3つの視点に立って私の意見を述べたいと思います。

第一に強調したいことは、子ども、とくに6歳から14歳(日本では
小中学校)の子どもは、いずれの国籍を持っていても、どのような
境遇にあっても、教育を受けるべきだということです。
世界的には子どもの人権という観点からも、その重要性が認識され
ています。日本のように高度に経済発展した高学歴社会で生きていく
可能性のある子どもたちにとっては、なおさらです。

しかし、現実的には日本に住む外国人の子どもたちのなかには、
様々な理由から不就学の状況にあるケースが多いと言われています。
このような事態は早急に改善されるべきです。

現在、外国人の子どもの教育について、日本政府の考え方は、
日本の学校で学びたいとの申し出があれば断らないが、それを
強制出来ないというものです。したがって、各地方の教育委員会
や学校は「待ち」の姿勢で、積極的には外国人子弟の受入を働き
かけません。その結果、外国人側が子どもの就学について十分な
情報を持ち、熱意をもって教育機関と接しなければ子どもは日本
の学校に就学する機会を失いかねません。

私は、日本政府の立場を  ある程度理解しますが、同時に
教育機関は、外国人の親がわが子の教育について最適な判断が
出来るよう、必要な情報の提供と相談の受付をきちんと行うべき
だと考えます。

一方、外国人の親の側はどうでしょう。わが子の教育について、
人任せ、国任せにしていないでしょうか? 子どもに教育を受け
させることは、親の義務であるということを十分認識しているで
しょうか? とくに、わが子が  将来日本に定住する可能性がある
なら、日本語をきちんと理解させる教育を受けさせる必要がある
ことを認識すべきです。

非正規滞在だから表に出られない、仕事が忙しい、経済的余裕が
ない等子どもの教育実現に様々な事情、困難を抱える人も多いと
思いますが、他の何をさて置いても子どもの教育を最優先に
考えて欲しいものです。

第二に、子どもが教育を受けるとして、どのような教育が適切か
真剣に検討することが重要です。子どもの母語と日本語の能力、
定住/永住か短期  滞在かといった将来の見通し等を勘案の上、
個別に判断する必要があります。

例えば、小中学校の段階では、日本の学校に通うべきか、それとも
エスニックスクール(ブラジル系、ペルー系など)に通うべきか
が重要な選択事項になります。私は、これまでに外国の子どもが
多数学ぶ日本の学校や、外国の子ども  たちが通う外国人学校を
訪ねました。その際、いつも2つの点に関心を持って生徒と接し
ました。

ひとつは、子どもたちの日本語能力がどの程度かという点、もう
一つは子どもたちが将来にわたって日本に定住する予定かという点
でした。

その結果、日本語の能力については滞在年数、年齢その他によって
個人差がとても大きいということ、そして定住か否かについては
「分からない。  親次第。」という状況の子どもがほとんどだ
ということが判りました。

子どもの頃から2カ国言語に接していれば、放っておいてもバイ
リンガルの能力が得られると考えている親がいるかも知れません。
しかし、私は読み書きも含めた語学修得という意味では、母語、
日本語のいずれかを確立させなければ、バイリンガルの能力の
取得は困難ではないかと思います。

従って、子どもの個別事情を踏まえてきちんと教育をしないと、
母語も日本語も中途半端ないわゆるセミリンガルになってしまう
危険性があります。さらに、子どもが日本の学校、外国人学校の
いずれで学ぶのかを決めるに当たって、日本に定住するのかいずれ
母国に帰るのかという将来
設計を持つことが重要です。

仕事の見通しがつくまで定住か短期滞在か決められないという
親の事情も理解できます。しかし、子どもの将来を考える
ならば、進学先を日本の学校にするか、エスニックスクールに
するか決めるためにも早く決断して欲しいと思います。

最後に、外国人子弟の教育に関する日本人社会と外国人社会の
協働について触れたいと思います。最近、日本人の中にこの
問題に関心を持ち、親身になって外国人の子どもたちを支援
する人たちが増えてきています。日本中のあちこちで、教育
関係者のみならず、民間非営利組織はじめボランティア組織の
メンバーが、何が外国人の子どもにとってベストな教育方法か
真剣に  議論しています。

でも、この人たちも時に空しさを感じるようです。なぜなら、
外国人側からの反応が感じられない場合があるからです。
自分たちが行っている支援が、本当に彼らの役に立っている
のだろうかと不安に感ずることがあると聞きます。

そのような支援者の不安を取り除き、さらなる協力を得るため
に、外国人の個人、社会がもっとこの問題を真剣に考え、どう
取組みたいのかについて意見を述べなければならないと思います。

そして、外国人子弟の教育について、日本人、外国人双方が
コミュニケーションを深めていけば、結果として国民レベルの
議論に広がり、政府、地方自治体の政策決定にも影響力を
与えるようになると思います。

外国人側からも、  大いに情報を発信してほしいものです。

以上、外国人子弟の教育について、日本政府は最善の策を
講じるべきです。  そして、多くの日本人がそれを訴え、
サポートするようになることが理想的です。しかし、外国人も
努力をしなければならないのです。

なぜならこれは、「自分の子ども」の問題です。自らが、自らの
コミュニティと共に考え、改善に向けた取り組みをして欲しいと
思います。それが、まずは第一歩です。

 


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