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        一新塾ニュース〜市民力で社会一新!
         【第274号】 発行日:2007年2月16日
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目次
■ 塾生活動レポート「 日本の地方自治と向き合って 」
                   一新塾第19期  朴 姫淑(パク・ヒスク) 氏

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メルマガ読者の皆さま、こんにちは。事務局の森嶋です。

皆さま、『希望製作所』をご存知でしょうか?
韓国を代表する市民のための独立的なシンクタンク(財団)です。
2月12日には、『希望製作所』の教育チームの研究員の方2名が一新塾に視察
にお越しいただきました。
市長や公務員を対象にした「市長学校」「公務員学校」を実施してきましたが、
今後は、地域の革新グループおよび地域住民を対象にした研修プログラムなど
を計画されているとのことでした。

さて、この『希望製作所』ですが、常任理事を務めるのは、韓国で最も尊敬を
集める市民運動家の朴元淳(パク・ウォンスン)氏です。中央政府をターゲットに、
落選運動のリーダーとして、2000年4月の総選挙では、落選候補として指摘された
議員の70%以上が落選するような成果を上げました。
しかし、落ちた政治家たちが再び国会に復帰するなど、中央政府に対する運動は、
限界をもたざるを得ないという反省から、地域社会に向かう流れが生まれます。
地方議会・地方行政を同時に変えない限り、中央政府の改革は成し遂げられない
ということです。こうした変遷を経て『希望製作所』は誕生しました。

さて、今回の一新塾ニュースを執筆いただいたのは、『希望製作所』の研究員
としてもご活躍されている、日本に留学されている第19期の朴姫淑さんです。

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■■■■     塾生活動レポート
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■■■         「 日本の地方自治と向き合って 」
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□■                                      朴 姫淑
   

● 韓国と日本、共通する地域の問題

  私は大学院で社会学を専攻としている。専門分野は地域社会学、地方自治
である。韓国にいるときから地方自治に興味を持っていた。20001年10月から
日本で留学している。韓国では1991年地方議会が復活し、1995年から自治体
首長の直接選挙が始まった。日本より地方自治の歴史は浅いが、地域が抱え
ている問題は日本とほとんど同じである。ソウル一極集中で、ほとんどの地方
は産業基盤も脆弱し、高齢化・過疎化に悩みながら脱出口が見えない。

そうした状況で、日本の「先進」事例がしばしば導入されるが、それは「成功」
の局面だけを見ている場合が多い。しかし、「成功」というのはあくまでも
特定の時点でも評価である。私は自分の目で他の国はどのような近代化、
経済成長、開発を経てこんにちに至ったかを確かめたかった。もちろん、
心の底ではそれまでの自分の生活や環境から逃げたい気持ちもあった。

● 日本の地域ネットワーク運動

 修士課程では日本の地域ネットワーク運動について調査した。
生協を母体として生まれた女性の政治組織を対象として論文を書いた。
地域活動を担っている女性たちに会い、日本独特の概念の「生活者」市民運動
について調べた。そこで、日本の中産階級・階層は韓国よりはるかに厚いことが
直感できた。「男性サラリーマン・女性専業主婦」という戦後の性別役割分業
構造は男性を職場へ送り、女性は地域に取り残された。取り残された女性たちが
自らの生活から見えてくる環境、子ども、平和、食などの問題を社会化してきた
のが日本の地域運動の主流ではないだろうか。一方、「生活者」の概念の中では
職業的運動家、専業活動家、労働者主体、理念・思想家など、旧来の運動を
つよく否定する傾向もある。市民活動をする人達の中でも政治アレルギー、
政党アレルギーが非常に強かったことは印象に残る。

● さらに、現場に根ざして

 博士課程では90年代以後日本の地方自治と地域福祉について研究している。
秋田県旧鷹巣町の高齢者福祉を2年以上調査している。鷹巣町は2003年合併し
北秋田市になったが、1991年から高齢者福祉政策を重点政策として進め、90年代
には「日本一の福祉」として知られ、羽田澄子さんのドキュメンタリ映画にも
なった。福祉に対する公的責任を明確にし、自治体としては始めて24時間ヘルプ
システムを作るなど、国の基準を上回る福祉政策を推進してきた。
とくに、ワーキンググループと言う住民組織と行政が連携しながら住民参加で
福祉政策を展開してきたことが評価された。

しかし、2000年代に入り自治体の財政危機や国の市町村合併政策、介護保険
実施などにより、それまでの「先進的な福祉」は「福祉のやりすぎ」と批判された。
「日本一の福祉」よりは「身の丈の福祉」が望ましい、ということで2003年自治体
政権が交代した。その後は「全国標準」に合わせ福祉政策は見直された。
住民も議会も福祉に対する意見はいまだに分かれている。財政危機の中でどのよう
な福祉政策が可能か、またお金がない中で住民は自らの生活の安全・安心をどう
守れるか、福祉に対する公的責任と自己責任をめぐって、住民はどのように社会的
合意を形成するか、という問題は非常に重要である。

一新塾では、こうした私の問題意識と関連してさまざまな意見が聞けそうで
期待が大きい。






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