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        一新塾ニュース〜市民力で社会一新!
         【第251号】 発行日:2006年8月18日
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目次
  ■ 代表理事メッセージ
   「私の落とし前 」〜アジアの贈り物 
          片岡勝氏(一新塾代表理事・「アジアの贈り物」理事長)=======================================================

メルマガ読者の皆さま、こんにちは。事務局の森嶋です。4月18日には
韓国ポスダック社CEOの申氏をお招きし、一新塾でご講演いただきました。
http://www.isshinjuku.com/04i_hassin/event/2006ev_harunoev6.html#0001

その際、日本のe-デモクラシーの発展のため、
政治家証券市場「ポスダック(日本版)」の無償提供のお話をいただき、
その受け皿組織として、片岡勝さんが「アジアの贈り物」を設立いたしました!

8月31日には、日韓両国の与野党の国会議員をお招きして、オープニング
セレモニーを開催します!

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■政治家証券市場「ポスダック(日本版)」とは?
 実際の国会議員をインターネット上の政治家証券市場に上場させ、上場した
政治家を対象に市民がサイバーマネーで投資する仕組みです。政治家の発言、
行動、将来性などによって株価が上下するため、 参加者はゲーム感覚も もち
ながら政治への関心を高めていくことができます。
 一般の証券市場と同様に、投資対象である国会議員と投資家である市民の間
にいい緊張関係が生まれ、市民の期待にいかに応えているか、政治家を毎日、
評価できる仕組みになっています。選挙は原則的に4年に1度おこなわれ、選挙
と選挙の間に政治家が何をしているのか有権者に見えにくいことがよくありま
すが、政治家を毎日、評価できることがメリットの1つです。韓国では、会員数
が既に50万人(人口の約1%)を超えています。
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以下、片岡さんからのメッセージです!

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  ■ 代表理事メッセージ
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         「私の落とし前」〜アジアの贈り物

                           一新塾代表理事
                       「アジアの贈り物」理事長
                               片岡 勝

  私が代表理事のひとりを務めている政策学校「一新塾」で、韓国の申氏の
講義があった。若い彼が話したのは直接民主主義の話だった。彼が大学3年の
時に論文を発表したのがPOSDAQ構想だ。政治家のNASDAQとして政治家を株価
のように日々、評価する仕組みだ。韓国のインターネットブームの中で、
彼はE民主主義を推進する。それは選挙のときだけに政治に影響力を与える
市民に、いつでも発言する機会を与えることとなった。会員は50万人、政治家
の行動や発言を市民が日々、評価する。そんな試みに取材が3000回も入っ
たという。韓国で間接民主主義の限界性を補う試みとなった。
http://www.posdaq.co.kr/

 その講義を聴いて、私は「これは日本にも、アジアにも必要となる社会
インフラだな」と感じた。60歳からはソーシャルキャピタリストとして次代
の仕組みに投資しようと宣言した後だったので、これは韓国からの贈り物で
あり、今後、日本で実験し、アジアの民主主義の推進に役立つ仕組みとして
プレゼントできれば、それは、自分のミッションに違いない、と興奮した。

ソーシャルキャピタルという概念は、お金だけでなく市民のボランティア
も含めた市民の持ち寄りの仕組み全般を指して言う。例えば、地域の福祉の
水準は所得の平均値が高いか、で決まるのではなく、その属するコミュニテイ
に互いに支えあう仕組みがあるか、によるという考えだ。WHOが提唱し、最近
ではアジア会議が持たれた。政府も福祉政策として地域をベースにした計画を
推進しようとしているのが、それだ。市や町、村単位で地域福祉計画を立てる
ことを義務付けている。行政のみが福祉の向上に責任を持つという姿勢から、
地域住民全員が互いに支えあうという思想だ。

ソーシャルキャピタルとは、アメリカの政治学者、ロバート・パットナム
の研究がきっかけとなって広がった概念だ。パットナムは、民主的な政府が
うまくいったり、失敗したりする背景に、コミュニティ活動やネットワーク
によって生み出される地域の連帯感や信頼感といった「ソーシャルキャピタル」
が関係していると結論づけた。いまだに明確な定訳は存在しないが、私流に
言えば、ソーシャルキャピタルとは、「市民のつながりや持ち寄り、協働が
生み出す地域の豊かさ、問題解決力」である。お年寄りや障害者、子供たち、
すべての人たちが住みよい地域社会を作るためには、行政や政治の力ではなく、
ソーシャルキャピタルを豊かにしていくことこそが求められている。

 間接民主主義は何かを決めたことにする合意の仕組みとして必要なことも
ある。しかし、マスコミ調査などで反対が多数でも議会が新たな法律や予算
を執行することがある。市民の無関心という責任もあるが、同時に、瞬時に
意思が反映しない間接民主主義という限界性も問題だ。その制度への諦めは
棄権行動を誘う。都市と田舎が、富めるものと貧しいものの格差が広がる中
で、合意システムが機能せず、無関心や諦めが広がれば、それが別の直接行動
を生みかねない。地球レベルで言えばテロの温床になる。私は世界84カ国を
訪ねた。その中に治安が悪化している地域や内戦の国がいくつもあった。
政治への諦めと現状の悲惨、それを解決する手段が見つからないとき、
その怒りは制度そのものに向かう。法律的には合法的に決めたこととする間接
民主主義の下で、利権や権力が独占され、情報が開示されないときに、内包
されたエネルギーがどこに向かうか、そんな怖さをいくつも見てきた。

アジアの中には十分な民主主義が担保されていない国もある。情報と言う
ものはどんなに規制しようが、人間社会では必ず伝わる。インターネットと
交通がこれだけ発達した時代ではなおさらだ。そこにこのPOSDAQの仕組みは
ひとつのソーシャルキャピタルになるに違いない。

私はコミュニテイービジネスという分野で、地域で後継者のいない事業
などを買い取り若者が経営するというスタイルを作ってきた。老舗の旅館、
地域のパン屋、行政の指定管理者制度もそれかもしれない。行政ではコスト
的にも将来メンテできず、民間経営センスが求められるからだ。今年、国会
を通過した公共サービス改革法(市場化テスト)も、それを推進しようとし
ている。この流れを加速するために投資することも、地域の若者が経営する
ことも、そこにお年寄りや障害者を雇用することもソーシャルキャピタリスト
の私の仕事だ。

私は1000万円でNPO的な会社を作った。名付けて「アジアの贈り物」。
e民主主義の先進地・韓国からの贈り物であり、アジアへの将来の贈り物に
するという意味で、その組織名にした。サイトの名前は「ポスダックジャパン」、
現在、ボランティア事務局がサイト開設に向け努力し会員を募集している。
http://www.posdaq.org/

 その立ち上げのシンポジウムを8月31日に行うことにした。
韓国から与野党の政治家を招き、日本からも同様に与野党の政治家にパネリスト
として参加してもらい議論する。間接民主主義の限界と、直接民主主義の
今後の合意システムへの可能性を語れれば、と思う。

私は市川房枝さんの担ぎ出しで「市民選挙」の名付け親になった。しかし、
狭義の政治に見切りをつけ、地域と言う現場に活動の場を移した。それは
正解だった。ささやかだが、成功事例を作り、それがモデルになって広がる。
そんな実感が日々、楽しい。私にとって20代の「運動」、30代の「組織」、
40代の「経営」、50代の「教育」、そんな人生の次が「公共」(ソーシャル
キャピタリストのほうが、「らしい」が、二文字単語にすると公共になるの
だろうか)だ。私事だが8月31日は50代を捨てる日だ。そんな時に、以下の
ようなシンポジウムを行う。野党の政治家として私の20代を燃焼させてくれ
た菅直人君も参加してくれると、ポスダックジャパンのボランテイア事務局
から報告があった。最近は会ってないが、1年ほど前に会ったとき、「落とし
前をつけねば」と言っていたのを覚えている。

私の落とし前は、今までの経験や財をソーシャルキャピタリストとして
次世代へ贈り物とすることなのかなと、思っている。



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